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ジュエリー
第1章 宝石は珊瑚に恋をする

珊瑚は肉体関係を持っていた女達との関わりを断った。宝石は相変わらず家庭ごっこに耽っていたが、彼女は退屈を嘆いては、そこに浪漫的な陶酔を覚える傾向があった。
ニヒリズムに喰まれた女と、酔狂なフレキシブル、両者が愛し合うまでに、さして時間はかからなかった。
「あっ……珊瑚……」
はぁっっ、と、世にも甘美な悲鳴が上がる。
昼下がり、大黒柱も継子も不在の邸宅は、さしずめ孤独な王妃の幽閉された金のパレスだ。情人は中でも優雅な閨房に忍んで、宝石をくるむ狭衣の全てを排除する。
女体は恐ろしい有機物だ。至高の美、さればこそ底なしの魔性がある。
珊瑚は魔性に殺されたかった。だが、文字通り情欲の相手の息の根を止められる肢体など存在するはずもなく、ゆきずりの淫らごとを安心して楽しんでいた時分があった。女の肉体は底知れない。まして人間の精神に恐怖する珊瑚にとって、女の心魂は、向き合うには敷居が高かった。
宝石は魔性を超越していた。過剰な理解し難いものがあった。
従って、珊瑚は宝石の裸体を喰う時、一種の神憑りにかからねばならなかった。
長い長いキスのあと、珊瑚は宝石をマットレスに膝立ちさせた。奇跡の産物、白い眩耀の肉叢を、後方から捕まえる。ほんのり湿った肩を撫でて、腕をさすって、ぷっくりと弾力のあるコットンパールをつけた白い丘を揉みしだいては、熱く柔らかなみぞおちの上に円を描く。うなじから背筋を啄みでなぞる。敬愛の吐息を吹きかけて、唇で触れたばかりの場所を指で追う。

