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ジュエリー
第1章 宝石は珊瑚に恋をする

 人の皮膚は、とりどりの色素から出来ているという。

 宝石も例に洩れなかった。黄土や赤、薄紅、青、きららかな鉱物のまとうものにも似通う白さを刷いた肢体は、こうも種々の偏光の組織を備えていた。まばらな濃淡、若干の顆粒層のでこぼこは、完全な美が求められた人形にはないだろう、みだりがましさがある。

 珊瑚は宝石を反転させると、やはり恐ろしい肢体を営む心臓を覆う肉に載った、コットンパールに吸いついた。唾液を塗りつけて、絡みついてくる腕の中に身を沈める。太ももを撫でさすってやると、野生的な吐息が珊瑚に降りかかってきた。


「すごい綺麗……宝石、ここも、……ここも、……」

「あんっ、あああぁっ……ぅっ、うぅぅ……」

「気持ち良いの?濡れてるよ、ほら……」


 くちゅ、くちゅ。

 皮膜の薔薇を指先でほぐす。とろみの海に溺れた花は、すこぶる濃艶な芳香で、そこら一帯を濡らしていた。


 珊瑚は、くずおれてゆく宝石をシーツに寝かせた。果実のようなももを押し広げて、脚と脚の間の茂みに指を伸ばす。そして、今また美しい水音を呼ぶ。


「ぁっんっ、はぁっ……ぅっ、んんっ」


 宝石の腰が、ぴくん、ぴくん、と踊る。自分を見上げてくる濡れた瞳が訴えてくる衝動が、珊瑚を替え難い愛おしさに顫わす。

 この女を満たすものは、快楽か、愛か。

 どちらも当てはまるのだろう、どちらかが欠けてもならないのだから。
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