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ジュエリー
第1章 宝石は珊瑚に恋をする


「外が良い?中?」

「はぁっ、ど……っちも、かな……」

「欲張り」


 珊瑚は、肉薔薇の頂の、ひときわ貪欲な部分を弾く。死にそうな音に上りつめるメゾを聴きながら、愛らしくきらめく粘膜の壺にキスして、刺戟を与えたばかりの粒を舌先でつつく。ウサギがミルクをしゃぶるがごとく、健啖に、淫らな粘液をしゃぶり上げる。


「あああっ……あんっあんっ、ああっっ!……」


 宝石の声に犯されて、宝石の肉体に纏縛される。

 珊瑚は恋人がびくびくっと潮汐波にさらわれてゆくと、口説き文句と丹念なキスで彼女を起こして、今度はめしべの窪みに指を挿し入れた。

 いびつな膣壁、指全体にぬらぬらとしたものが絡みついてくる宝石の中は、野蛮なまでにいかがわしい海でありながら、たぐいない崇高な原石を秘め隠してでもいる秘境だ。


「珊瑚ぉっ……もうっ、ダメぇぇ……あっあんっ、ああんっ、あああっ……」


 大好き、大好き、と、熱に浮かされた宝石の声が、珊瑚の総身にまとわりつく。

 この世に意味あるものはない、珊瑚のそうした精神が、根底から覆滅されてゆく。



 宝石は海を好きだと言った。珊瑚が好きなものを訊ねると、そんなものはないと返ってきたが、それでも答えを促すと、今度は海だと返ってきた。それから、珊瑚の指が好きだと言った。絶対的な愛念、快楽、この令閨はすました顔で、男性器ではそれらのものを得られた試しがなかったのだと続けた。


 珊瑚はあの病室で、こうなることを予感していたのかも知れない。

 ぼうぞくな権力の招いた不正、例の職場をやめたのは、愛想を尽かしたからではない。またぞろ倒れては格好悪いし、美しい恋人の憂慮をまた宥めねばならないと思うと、気が咎めたのだ。







第1章 宝石は珊瑚に恋をする──完──
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