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ジュエリー
第2章 別離

村田広松は宝石の明るい頬を打った。随所に骨を浮かべた肢体を殴って、がなり立てた。彼は彼女の顔が苦悶に歪めば歪むほど、愉悦の混じった息を吐いた。理性をなくしたひょうろく玉は、目を剥いて、雑駁とした慨嘆、クレームを、若く美しい細君にぶつけた。
珊瑚は、勝手知ったる邸宅の屋根裏に押し込められた。宝石と二人、広松の独房に禁足されて、足を枷に繋がれた。
埃っぽい物置は、スマートフォンも取り上げられて、助けを呼べる頼みもない。
珊瑚の対角に宝石がいた。彼女の腕の自由を封じる何重もの縄が、宝石の肉叢を包む衣服をたゆませていた。
「…………」
珊瑚は、薄汚れた木材の床に腕を伸ばす。
届きそうで、触れられない。
夜な夜な広松が昇ってきた。
珊瑚は広松の因業な足に蹴り起こされて、恋人の纏縛がほどかれるのを見せつけられる。荒々しい手つきに剥かれた衣服から、珠の肢体が現れる。青い顔に同化した薄い唇を塞ぐキス、流れる涙をしゃぶる舌、それらは生肉を貪る猛獣の所業だ。珊瑚は声も出なかった。広松の肩越しから向けられてくる黒曜石、いじらしいぎりぎりの微笑みが、どれだけ暗に大丈夫だと訴えてきても、ただただ跼蹐の疼痛にうずくまった。

