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ジュエリー
第2章 別離

「…………。……」
宝石の目が動揺を訴えてきた。珊瑚は肌着だけの姿になると、人目に晒し馴れない肉体を月明かりに許した。
「見て。……宝石の、身体。今だけ……」
珊瑚は乳房を覆っていた下着を外して、強張る頂に指先を伸ばす。夜陰の不自由を幸いにして、宝石のそれを愛でた時と同じ心地で、自身の肉体に呼び水を招く。
「あたしの身体。……宝石の身体だと思って、こうしてあたし、貴女を抱いてた……愛してた。愛してる。……見て。……」
「あ……あ、ぁ……」
令閨の渇いた喉から、今宵一番のつややかな吐息がこぼれた。
珊瑚は自ら身体をいじる。愛する女に見られる羞恥、彼女に触れられないやりきれなさが、そうした雑念を追い払う。
数日後、珊瑚は呆気なく解放された。宝石がつわりを催したのだ。
広松は救急車を呼んだ。
珊瑚は手切れ金という名目の口止め料を押しつけられて、深夜の街頭に放り出された。珊瑚は嫌みったらしい風格を備えた豪邸に引き返して、広松が最も好んでいるという鉢植えめがけて、金一封を投げつけた。罪なき花をつけた茎は、無惨に折れた。

