この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
ジュエリー
第3章 蜜月、そして酷愛

「部下に任せていた案件が行きづまっていてな、電話があった。今から出かけねばならん」

「帰ってきたばかりじゃない。外も暗いわ」

「終電が済んだら役所に泊まる。その時はメールする。お前と珠子は先に飯を食え。あいつの方は、……はは、もう一人前になったんだったな。良いから、俺のことは心配いらない」


 魁偉な男が窮して硬い表情を解くや、細君の頭をくしゃりと撫でた。眉を透かしたロマンスグレー、その真下の黒曜石が、柔和な慈愛を表した。


「ええ、貴方。どうかご無理なさらないで」


 細君の手が男のネクタイを整えてやる。

 幸せな家庭に庇護された、事実その通りである細君は、男の悪戯な目に捕らわれる。片手首と共に。


「お前、……そんなに可愛い顔を見せるなよ。もう若者じゃないんだぞ。家を空けたくなくなるではないか」

「あらっ、三十五は年かしら?」

「すまんすまん」


 男の不慣れなユーモアに、細君は朗らかにとり合った。

 細君の手首はすぐにしみだらけの手から逃された。男の目にほのめく私愛、そこに深い悲しみが紛れる。


「真面目に会議をしてくるよ。今からでは間に合わんかも知れないが、お前に失望させたくない。あの頃、お前に苦労をかけた。お前は大学時分、たくさん友達がいた。友達と遊ぶより俺の側を選んでくれたのに、俺はお前に新しく出来た友達に嫉妬して、……怖くなったんだ。お前がどこかへ行くんじゃないかと心細くなって、俺はお前と珊瑚さんにあんなことを。お前は俺を許してくれた。珠子がいることが分かった夜、俺はお前に別れを切り出されるのではと腹をくくった」


 だが、と、男の喉が低く唸った。
/50ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ