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ジュエリー
第3章 蜜月、そして酷愛


「お前は、どうして俺の不安に気付いてくれた?」

「貴方が寂しそうだったから。貴方がそれだけ私を愛してくれているんだと、あの日々があったから、分かったの」

「そうか……。有り難う。有り難う。あの日、俺の手を握ってくれた……お前の手が、俺にもう一度チャンスをくれた。たつきを信じてやれるつもりになった。あいつは俺の二の舞にはならない。あいつは、俺よりずっとしっかりしておる」

「パパぁ。パパぁ。仕事でしょ」

「ああ、そうかそうか。はは、珠子もしっかりしてきたなぁ、いつからいたんだ?お前もお母さんに似てきたもんだ」



 破顔した男は、にわかに割り入ってきた愛娘を抱き上げた。あどけない目を盗んで愛妻にキスを送る。


「じゃ、行ってくるよ。珠子、お父さんを玄関まで送ってくれるか?」

「うん!パパがちゃんと仕事へ行くか、見ていてあげるわ」

「行ってらっしゃい、貴方。珠子、お父さんにあんまり生意気な口、利かないの」

「良いじゃないか、お前。珠子、お前のお母さんは厳しいなぁ」…………


 優しい良人と愛娘が出ていった。

 細君の、とても一児の母親らしからぬ顔に、刹那、ひと仕事終えた時の疲労が覗いた。それから、ようやっと肩の荷が除かれたようにほぐれた。
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