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ジュエリー
第3章 蜜月、そして酷愛

「広松さんは、私達を生物医学に反すると言った。珊瑚が私にくれたものをままごとだと言って怒った。そして今は、私達が友情で結ばれているんだと信じている。真実を見ようともしない。あの人は自己顕示欲の塊だわ。都合の悪いものから目を逸らそうとしているだけ。自尊心と虚栄心、無知が、あの人を構成している全て。私が珊瑚に感じてあの人に感じないものがある、それはあの人自身が欠陥を認めざるを得なくなる材料なんだわ。そして怒るの。人間は、そういう生き物。どこかで自分勝手に生きたがる。大した根拠もなくルールを決めて、押しつけたがる」
「それで宝石もそうするの?同じだね」
珊瑚は宝石の片手をとって、指を絡める。
恋する少女の目にも似通う黒、黒曜石の煌めきを見つめて、薄い桜貝を載せた指を口に含んだ。
「何を言っても理解出来ない人間はいる。それが現実。あたしにも理解出来ない人間はいる。お互い無理に押しつけ合っても、消耗に終わるだけじゃないかな。あたしの親は、ずっとあたしを異性愛者だと思い込んでいたよ。一生思い込んだままだと思う。でも、それであたしが不自由したわけじゃないし、たまに気分が悪くなることがあったから、別居していた。おまけに厭世的。明るそうで着道楽な娘が、まさか世界の構成組織が皆虚無だと考えているなんて、夢にも思っていないだろうね」
宝石は黙って聞いていた。まるで興味深い音楽にでも耳を傾けている眼差しで。

