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ジュエリー
第3章 蜜月、そして酷愛

「世界が望むこと、好むことなら何でもするよ。結婚なんてままごとも、男の身体にだって触る。あたしは変わったかも知れない。世界と同じ……変わらないものなんて何一つないから、あたしも変わるの。貴女だけがまこと。硬質な珠玉はいつまでも光り続けるの。他の何もかも嘘で構わない。貴女と別れて、あたしは一度、息絶えた。本当に死にたくなった、……どうやって死のうか考えていたら、放蕩息子の顔が浮かんだ。どうせ死ぬなら少しくらい良い思いを味わってから。あたしの命は最後の、──……。あたしは殺されれば殺された分、宝石と一緒にいられる。宝石のためなら何でもする。貴女を見捨てて死ぬなんて、……二度とそんなことしたくなかった」
「──……」
腕と腕とが交差する。珊瑚は宝石の首筋に頬を預けて、宝石の重みを肩に得る。
「珊瑚、……珊瑚」
幻ではないかと疑るほど近くで、宝石のメゾがくぐもった。
「私は貴女のお陰で生きている。貴女がこの世界のどこかにいて……そう信じたから、耐えてこられた。いつもどこかで貴女を感じた。見えなくても、声は聞こえなくても、私の海を貴女が泳いでくれた感覚……強く、強く残っていた。貴女の言葉が耳の奥から離れなかった。私を守ってくれるのは、珊瑚だけ。もうどこにも行かないで。ずっと、ずっと、私は貴女の奥さんでいる。……」
「宝石……」
珊瑚は小さな身体をあやす。
きっと宝石の体内の半分は、珊瑚が営んでいる。そして珊瑚の体内の半分は、宝石が営んでいる。
「プレッシャーだよ、……」
「──……」

