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ジュエリー
第3章 蜜月、そして酷愛

珊瑚は寝室に滑り込むや、後ろ手に扉を閉めながら、宝石を腰からかき抱いた。
芳しい吐息を連れて押しつけられてくる唇、彼女のキスに縫いとめられて、珊瑚は媚薬を孕んだ薄皮を味わう。極上の木の実にありついた小鳥のごとく啄みの中、とろけてゆく意識を凝らせて、女体特有の曲線を探る。
「んっ、はぁ、ふっぁ、んんっ……」
宝石の唇を濡らしながら、乳房を撫でる。衣服の下で、弾力のあるコットンパールが尖っていくのを、指の腹に感じる。その一点を、幾らか荒く刺戟する。
伸びてきた片手を捕まえて、組み繋ぐ。
「宝石、んんっ、……はぁ」
唇同士で触れたまま、二人、寝台へ移った。
珊瑚は宝石を天蓋の真下に下ろして、しどけなく伸びた膝の脇に重心をかけた。
「珊瑚。……」
今一度塞ぎにかかった唇が、にわかに動いた。
火照ったアーモンド型の双眸が、珊瑚をおずおず見上げていた。
「触っては……ダメ?」
「──……」
珊瑚は、狂おしいほど甘ったるい光に濡れた黒曜石に、無性の信頼を見出していた。
絶対的な酷愛、崇拝……愛において欠くことの不可能な熱意が、宝石の中にも烈しくあった。
「…………」
宝石に身体を見せたのは、随分、昔だ。何度くらいだったろう。あの屋根裏が最後だった。
たつきの劣情をそそのかして、攻撃的な生殖器を受け入れた。そして交際、好意という空音をなるべく迅速に刷り込もうと、ひとえに係蹄のためだけに、あの子供の本能に供給し続けた。そうして戸籍上の良人となった男は、ここ数ヵ月こそ、再び友人達との交際に時間をあてているが、珊瑚の身体は、愛の供物でなかった時分同様には戻らない。

