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ジュエリー
第3章 蜜月、そして酷愛

自我などないも同然だった継母は、たつきの配偶者と関わる時に限っては、息を吹き返していた。
傍観者の第六感にまでまといつく、いっそ禍々しいとさえ言えるほどに躍動的な肉慾は、この世の果てまで探し彷徨っても遭遇出来まい、切実な酷愛を根拠としている。
たつきの最初で最後の女神が、宙に投げ出した脚を痙攣させて、小さなウサギにしがみついていた。ウサギは女神の肉叢をしゃぶる。骨の髄まで喰い尽くさんばかりに、貪欲で淫靡な魔法にでもかかったように、女神の泉門に呼び水をかける。
「あんっ、あああっあっ……ああん!……」
薄紅の縁取る強気な目、日に日にきらめきの増すガラス玉は、女神にのみ微笑んでいた。宇宙はこうも広大なのに、彼女は、きっと女神が現世の全てと信じて疑っていない。
十年前は足繁く通った女神の私室、たつきはその扉の隙間から、目が離せないでいた。
帰宅しても細君がいない。そうした夜、彼女は大抵、父の目を盗んで、友人同士の語らいと称した愛の儀式を営んでいる。たつきは細君を追ってここを訪う。自分にとうとう得られなかった、あらゆる情熱を濾過した生気のおこぼれを漁る。
彼女の虚偽に道化のごとく欺かれたのは、こうした甘美を啜れるだろうと期待してのことだった。彼女の空音は見抜いていた。
たつきは、自ら嵌まった係蹄ばかりか、間抜けな父の姿も楽しんでいた。
昔、広松は最初の細君に愛想を尽かされて逃げられた。それからというもの、博識、財力、社会的地位を盲信するようになったのだ。力ある人間は人間を力で被支配に置ける、彼は息子にそうした教えを刷り込みたがった。

