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ジュエリー
第4章 珊瑚は宝石に想い焦がれて

昔、どこかのとち狂ったインターネットのエッセイに、論じてあった。
男の目下で女にじゃれつく女の狙いは、男にみだりがましい姿を売り込むところにあるのだという。めでたい誤謬だ。その理屈なら、女の気を惹きたい女は、男にじゃれつけとでも言うのか。世界には、特に日本のような後退国には、無知にも気付かず他人を理解したつもりになって、説明したがる無恥がある。
覗かれた者の気持ちにもなれ。たつきの身体的機能の一部を排除するのは、見せしめだ。誰に見せつけるのでもない。珊瑚が一人で眺めて一人で慰められるだけの、見せしめだ。欺瞞と洗脳の哀れな産物、異性愛者がそんなに偉いか。
珊瑚は、杭の先をたつきの眼球に突き刺した。ビニールでくるんだ利き手の中指、そこだけは真紅を浴びせないよう注意して、四本指で杭を打つ。
「ぅぐぁああああああっ……」
この耳が愛のささめきを盗むなら、聴覚を消す。この目が愛の情景を望むなら、視覚を毀す。
「うっうっ……くぅ……ぁ……ああああ……」
美の絶無、官能の不在が、珊瑚の心魂をいよいよ静謐へいざなう。
ハンマーが、不気味な感触を珊瑚に伝える。ぐちょぐちょと汚ならしい音が続く。感触も音も、動物性の料理を好まない珊瑚には、余計に不快だ。
杭は、半分ほど球体のゼリーに沈んでいた。この眼球を貫けば、先端は脳味噌にでも迫るのか。
珊瑚は、もう一方の節穴にも同じ罰を下す。珊瑚の神を辱しめた目、珊瑚でさえ畏怖した神の肢体を視姦もした目、害悪を極めた目路を毀す。

