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ジュエリー
第4章 珊瑚は宝石に想い焦がれて

「彼女はあたしの宝石でした。宝石……輝き出すのは随分遅かったけれど、お陰であたしは彼女の花盛りの大半にいられた。宝石のために何でもします。宝石と共に、宝石を守れるなら、どんな手管も選びます」
「愛慾がモラルや偏見を覆す、か……。興味深い昔話を聴きました。有意義な時間のお礼をさせて下さい」
検事官は続けた。
「救急隊員の話によると、村田たつきさんは、ダイイングメッセージを残したようです。許せ、と。貴女の犯行は、継母を強姦した放蕩息子への報復とも説明つきます。無論、この件にご両親は一切の関係もありません。私も、今宵の貴女のお話を必要以上に他言するつもりはありません」
「…………」
時刻はまもなく深夜零時だ。
検事官の、聖職者や父親にありがちな性質を備えていた双眸が、にわかに変わった。
「貴女を無罪にしてあげます」
初老の男が腰を上げた。珊瑚は椅子にかけていた。検事官が粗末なデスクの側に立つ。しみだらけの醜い指で、糊の張られたズボンを下ろす。珊瑚は中指を見つめていた。宝石の体温が蘇ってきた。検事官の股間に肉塊が現れた。善良な市民を守ってきた唇が、彼独自の道徳を唱えた。

