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ジュエリー
第4章 珊瑚は宝石に想い焦がれて






『最愛の人は、光。宝石。光。ひかり。……村田ひかり』



 ひかりは冬の海を訪っていた。

 寄せては返す波の音が、涸れた総身をひととき潤す。


 恋人からの深夜の電話、あれは七年前の初秋だ。長い長いはかなしごとは、窓の外がほのかに明らむまで続いた。
 ひかりは眠たいから切ると言った。恋人はもう少し声が聞きたいと言った。ひかりはそれなら翌日訪ねると言った。恋人は狭苦しい日本に飽きたから、遠い場所へ移ると言った。ひかりは付いて行くと言った。恋人は自分の母親の話を始めた。そうして果てないようなはかなしごとが続いた末、恋人は最後にそう言ったのだ。


 宝石。


 九年ぶりに呼ばれた名だった。

 ひかりが珊瑚に宝石と呼ばれたのは、二度きりだ。

 一度目は、友人同士の交際を始めてまもない頃。ひかりはカフェテラスで未熟な精神を珊瑚に語った。宝石とは、皮肉のこもった世辞だった。そして二度目、最後は七年前の深夜の電話だ。


 宝石。


 九年ぶりに呼ばれた名は、敬虔な愛が込められていた。この世の果てから送られた、最愛、酷愛の極み、燃ゆるような情念だった。



 それきり音信は絶えた。それから七年の歳月が過ぎた。
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