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ジュエリー
第1章 宝石は珊瑚に恋をする

「ねぇ、貴方」
花のように笑っていた紅一点が、ともすれば父親年代の良人の腕をさすった。
「倒れたパートの方、どちらの病院に運ばれました?私、お見舞いへ行きたいわ」
「やめておけ。とるに足りないニート上がりの貧乏人だ」
「私はお詫びを申し上げたいの。それに、退屈なの。会社をやめて、昼間の家事を終えたらほとんど仕事がないんだもの。貴方と一緒になる前の私からすれば、こうものんびりした毎日は、考えられないことだった。それでも、貴方が私に、家にいるよう言ってくれたから……。たつきさんは受験生だし、学校から帰ってきても、お茶の相手をしてもらえないでしょう」
「…………」
広松の儼乎たる顔面に、苦渋が浮かんだ。
たつきの父の黒い喉が、堪忍したと言わんばかりの音を鳴らした。
お義姉様は、こうしてパートの搬送先を聞き出した。翌朝、彼女は病院を訪うにしては不謹慎なまでに着飾って、学校へ発つたつきを、いつも通り玄関先まで送り出してくれた。

