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残り火
第4章 木曜日



 夫とは、もう長いことセックスをしていない。
たぶん2年か、もしかしたらそれ以上。
寝室は別々だし、夫はもう私の裸に興味はないし、
私はもう夫には触れられたくない。

 私に触れていいのは俊郎だけ。
私が触れたいと思うのも、俊郎だけ。

 木曜日。
私は少しずつ生気を取り戻している。
あと一回だけさみしい夜をやり過ごせば、俊郎に会える。
そう思えるだけで、私の凍えきった体は解凍され、
心臓が元気に脈打つようになる。
温かい血液が手の先足の先まで行き届き、
生きている喜びに満ちてくる。
俊郎の指と舌が肌を滑っていく感じを思い出しても、
もう平気。
明日にはそれが与えられる。
明日までくらいなら我慢できる。
俊郎が私の着ているものを脱がせていくとき、
私は一枚ずつ理性まで剥かれていくのを感じる。
理性の殻をすっかりと全部剥いた私たちは、
もう全身が性器になっている。
さおりを抱いていると全身がペニスになったようだ、
と俊郎が呻いたとき、
その表現のあまりの的確さに驚き、感動さえした。
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