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残り火
第5章 金曜日

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 夜になり、俊郎と会える時間が近づいてくるにつれ、
つらい記憶がひとつずつ蘇ってくる。
俊郎の怒った顔、うんざりした顔、沈み込んだ表情が、
目を逸らせないリアルさで目に浮かんでくる。
現実が私を押し潰そうとしてくる。
もう楽しいことばかり思い出していられない。

 実はここ最近、俊郎とはあまりうまくいっていない。
違う。
正直に言う。
全然うまくいっていない。
俊郎は私が目の前にいるのに、
私を見ていないことがあることに気づいてしまった。
最初は甘えた声で、どこみてるの?
とか、なにを考えているの? とか聞いていたけど、
そんなことが増えてくると、甘えられなくなった。
名前を呼んでも気づかないことがあったり、
時間には正確だったのに、
待ち合わせにしばしば遅刻してくるようになった。
私はそんな俊郎にイライラしてしまって、
キスを求められても、そんな気分じゃないの、
とつい言ってしまうことが増えてしまった。

 もうだめなのかも、ということは、
普段は考えないようにしている。
じゃないと私は、精神を保てなくなるかもしれない。
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