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残り火
第6章 悪魔
 途中で買った缶コーヒーをポケットのなかで弄びながら、
先週会った日のことを思い出す。
やっぱり俊郎はもう情熱的な目で私を見てくれなくて、
悲しくてつらかったけど我慢して、
でも体調不良を理由にホテルに行くことを拒まれて、
私はかっとなってしまって、
思わず俊郎をなじってしまった。

 もう帰って寝たら?
風邪ひくと大変よ。
じじぃなんだから。

 じじぃというところを特に強調して私は言った。
俊郎は一瞬驚いた顔をしたけど、
すぐに力なく笑って、
じゃあそうするよ、と言った。
じゃあってなんだよって、
でも声には出さずに俊郎を睨みつけていると、
キスしようとするので頬をひっぱたいてやった。
それでもめげずに俊郎は私を抱き締め、
俊郎のにおいに全てを許してしまいそうになり、
慌ててもがいて俊郎の腕のなかから逃げ出した。
たっぷり1分くらい黙ったまま睨み合って、
黙ったままその日は別れた。
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