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残り火
第6章 悪魔
「行こうか」

 肩を抱かれ、歩き始めたけど、
一歩ごとに不安がむくむくと膨らんでいった。
行き先を聞くこともできず、
行きたくないと歩を止めることもできず、
ただ俊郎に連れていかれた。
絶望に向かって歩いているようだった。

 たどり着いたのは、
俊郎と初めてひとつになったシティホテル。
ひとつになったというより、
ひとつに戻ったと言うほうがしっくりくる。
あのときと同じ部屋を、俊郎は予約していた。
特別でもなんでもない日にそんなことをされて、
私はすでに嫌な予感で泣き出しそうになっていた。
窓から見えるムーディな夜景も、
室内の落ち着いた色合いも清潔なベッドも、
全部よそよそしくて、私から目を逸らせているようだった。

 部屋に入り扉のロックが掛かった途端に、
俊郎は豹変した。
いきなり突き飛ばされ、よろめいて、
体勢を立て直す前にベッドに押し倒され、
のし掛かられた。
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