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残り火
第7章 残り火
久美子は元気そうだった。
息子の大学入試と娘の高校入試が重なって、
家のなかがぴりぴりしているそうで、
息抜きできて嬉しいわ、
と喜んでいた。
会社では課長を務めていて、公私ともに充実している。
同い年なのに私はどこか久美子を妹のように感じているので、
彼女の幸せを妬む気持ちにはならなかった。
どうでもいいようなおしゃべりをして、
少し元気を分けてもらえた。
※
あれだけ俊郎にひどいことをされたのに、
俊郎を恨む気持ちが出てこない。
俊郎がどうしてあんなことをしたのか、
わからないのにわかる気がする。
まったくばかばかしいことなのだけど、
私は金曜日がくるごとにそわそわし、
夜になるともうなにも手につかなくなり、
出掛けてしまう。
いつもの待ち合わせ場所を遠くから眺める。
俊郎がきているという期待はしていない。
ただ、きていないということを確認するために、
私は虚しい外出を続ける。
息子の大学入試と娘の高校入試が重なって、
家のなかがぴりぴりしているそうで、
息抜きできて嬉しいわ、
と喜んでいた。
会社では課長を務めていて、公私ともに充実している。
同い年なのに私はどこか久美子を妹のように感じているので、
彼女の幸せを妬む気持ちにはならなかった。
どうでもいいようなおしゃべりをして、
少し元気を分けてもらえた。
※
あれだけ俊郎にひどいことをされたのに、
俊郎を恨む気持ちが出てこない。
俊郎がどうしてあんなことをしたのか、
わからないのにわかる気がする。
まったくばかばかしいことなのだけど、
私は金曜日がくるごとにそわそわし、
夜になるともうなにも手につかなくなり、
出掛けてしまう。
いつもの待ち合わせ場所を遠くから眺める。
俊郎がきているという期待はしていない。
ただ、きていないということを確認するために、
私は虚しい外出を続ける。