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残り火
第2章 火曜日
A3サイズの、
手が切れてしまいそうなくらいの、
ぺらっぺらの用紙。
肩透かしをくらってしまうほどの軽薄さに、
そこまで深く考えることもないのかな、
と思ってしまいそうになる。
一緒に受け取った空封筒に、
その用紙を折りたたんでなかに入れ、
急いで鞄に押し込んだ。
職員にじろじろ見られているような気がして、
私はお礼も言わずにその場を立ち去る。
平日の午後2時45分というなんともいえない時間を見計らってきたのに、
市役所には思いのほかたくさんのひとがいた。
あれ、さおりじゃない?
今にもどこからかそう呼び掛けられそうで、
私はうつむいたまま早足で市役所を後にした。
空は重そうに暗く、鼻が痛くなるほど冷たい風。
とにかくどこかで落ち着かなくては。
たった一枚、離婚届の用紙をもらうだけで、
こんなに緊張するなんて予想外だった。