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残り火
第2章 火曜日
 私も、知人かと思いました。

 言い終わると同時に、
雨の最初の一滴が頬に当たった。

 降り始めましたね。

 俊郎は言い、空を見上げた。
私もつられて見上げると、雨の滴が目に入った。
なんだかよくわからないけど、素敵だと思った。
雨が降り始めたタイミングも、
降り始めの道路のにおいも、街の暗さも、
俊郎の佇まいも、声の響き方も、
なにもかも。

 どちらまで行かれますか?

 俊郎がそう言ったとき、
ちょうどタクシーが一台入ってきた。
ヘッドライトの光線の先に、
銀の糸が走っているのが見えた。
行き先方面と告げると、俊郎は無言で頷いた。

 タクシーが私たちの前に止まって、
後部座席のドアが開く。
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