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絶対に許さないからね
第11章 大事なもの
「母さん、詩子と一緒ですごく楽しかったって。
母さんのあんな嬉しそうな顔、久しぶりだ。
改めて俺からも礼を言うよ。
ありがとうな、美香」

「いや別に、わたしにお礼言ってくれなくても」

 あの温泉宿が、
母の不倫現場になる予定だったってこと、
兄は知らないんだろうな。
まあ別に言う必要もないか。

「わざわざお礼のために電話してくれたの?」

「ん?
ああまあ礼を言いたいってのもあるけど、
それだけじゃないんだ。
お前に、見せたいものがあってな」

「見せたいもの、なに?」

 聞いたけど、兄は、うんちょっとな、
と言葉を濁してはっきりとしない。
まあいい、なにか知らないが、
見せたいのなら見てやろうじゃないか、
という気持ちになって、
いいよ、と軽く返事をした。
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