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絶対に許さないからね
第11章 大事なもの
 一瞬、思考迷子になった顔をした後、
ああ、と兄は言った。
おもむろに立ち上がり、
夢遊病者のように、ふらふらと出ていく。
なつかしいリビングのにおい。
母とたくさん笑い合ったキッチン。
レースのカーテン越しに庭が見える。
盛りを過ぎたひまわりがうなだれている。
テーブルには新聞が出しっぱなしで、
パンくずもたくさん落ちている。
しのぶさんは朝早くから出掛けたんだな。
しかし兄よ。
テーブルくらいは自分で拭けるだろう。
家事を全部しのぶさんに押しつけるのはよくないぞ。

 ひとり取り残されたわたしは、
無意識に耳をそばだてる。
母の気配を探っている。
ぺたぺたとスリッパの音と、
かつかつとフローリングを引っ掻く爪の音。

「あれ、おじさんは?」

 詩子がリビングに顔を出した。
すぐ横で賢くお座りするオーロは、
まるで従者のようだ。
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