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絶対に許さないからね
第12章 父の遺言



 夜、詩子が寝てから、
寝室でひとり、父からの遺言と向き合う。
新聞すら読めない活字苦手なわたしでも、
こればかりは読まないわけにはいかないな。
兄に、要約してくれ、とさすがに頼めない。
兄の前で読みかけたけど、
持って帰って読んでくれ、と頼まれた。
この遺言の存在を、母は知らないそうだ。
父の生前、母がケアマネージャーとやりとりしているときに呼ばれ、
直接手渡された。
おれが死んでから読んでくれ、と。

 それと、わたしがひとりで読んでほうが、
意固地にならないだろうという配慮もあるのだと思う。

 封筒から便箋を取り出す。
また手が震えはじめている。
眼鏡を掛け、いや老眼鏡ではない、
乱視なのだ。
誤解なきように。

 動揺しているのを自覚しながら、
深呼吸をして、父の文字に目を落とす。
ああ、活字が襲いかかってくるぅ……
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