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絶対に許さないからね
第14章 許したわけじゃないからね
 運転手さんに待っていてもらい、
玄関のチャイムを鳴らすと、
困り果てた顔の母が出てきた。

「出掛けるってどこへ行くの?
行き先言ってくれないと、用意のしようがないわ」

 母は、とりあえずその辺りにあったものを着ました、
って感じの恰好をしていた。
濃いグレーのチュニックにベージュのゆったりとしたパンツ。
お墓参りなので派手な恰好をされていたら困るな、
とは考えなかった。
今の母は、ほんとうに地味なものしか着ない。
地味なものしか着ていないのに、
そこそこ様になっているのが不思議。

「なんでもいいの。
ちょっとそこまで行くだけだから」

「そこまで、って……」

 不服そうな母をタクシーに押し込み、
運転手さんに、お願いします、とだけ告げた。
母とふたりだけで出掛けるなんて久しぶり過ぎて、
なんだか変でそわそわする。
昔はよく一緒に出掛けたな。
父をほったらかしてランチに行ったり、
映画や美術館、コンサート、買い物。
母と出掛けるのは楽しかった。
年相応に全然見えない若々しい母が自慢だった。
わたしもこうなりたいって、
ずっと思っていた。
思っていたのに……
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