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絶対に許さないからね
第14章 許したわけじゃないからね
いくら促しても降りようとしない。
でも、とか、だって、とか言うばかりで先が続かない。
運転手さんに迷惑だから、と言うと、
母はようやく車から降りた。
運転手さんはずっと知らんぷりで、
話を聞いていない顔をしてくれていた。
墓の場所はだいたい聞いている。
案内所に売店が併設されていて、
そこでお供え用の花を買った。
花を右手に、水を満たした手桶を左手に、
教えてもらった場所に向かう。
D区画、中央通路の左側、
奥から三列目の中ほどの黒い墓石。
坂井と書いてある。
あった、見つけた。
坂井直人の墓。
振り返ると、母がいなかった。
あれ、と思って見渡すと、
入り口のところに突っ立っているのが見えた。
遠目でも、泣き出しそうな顔をしているのがわかる。
もらい泣きしてしまいそうになって、
わたしはわざと大きくため息をつき、
花と手桶をそこに置いて、母を迎えにいった。
「お墓、見つけたよ。行こう?」
手を差し出すと、
母はすがるようにわたしの手を取った。
詩子を幼稚園に通わせるようになって二日目三日目くらい、
今日も置いていかれると不安いっぱいで泣き出しそうな詩子の手を引いて、
幼稚園の門をくぐったときのことを思い出す。
今の母も、あのときの詩子と同じ顔をしている。
でも、とか、だって、とか言うばかりで先が続かない。
運転手さんに迷惑だから、と言うと、
母はようやく車から降りた。
運転手さんはずっと知らんぷりで、
話を聞いていない顔をしてくれていた。
墓の場所はだいたい聞いている。
案内所に売店が併設されていて、
そこでお供え用の花を買った。
花を右手に、水を満たした手桶を左手に、
教えてもらった場所に向かう。
D区画、中央通路の左側、
奥から三列目の中ほどの黒い墓石。
坂井と書いてある。
あった、見つけた。
坂井直人の墓。
振り返ると、母がいなかった。
あれ、と思って見渡すと、
入り口のところに突っ立っているのが見えた。
遠目でも、泣き出しそうな顔をしているのがわかる。
もらい泣きしてしまいそうになって、
わたしはわざと大きくため息をつき、
花と手桶をそこに置いて、母を迎えにいった。
「お墓、見つけたよ。行こう?」
手を差し出すと、
母はすがるようにわたしの手を取った。
詩子を幼稚園に通わせるようになって二日目三日目くらい、
今日も置いていかれると不安いっぱいで泣き出しそうな詩子の手を引いて、
幼稚園の門をくぐったときのことを思い出す。
今の母も、あのときの詩子と同じ顔をしている。