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絶対に許さないからね
第14章 許したわけじゃないからね
 母と並んで、坂井直人の墓の前に立った。
死者への礼儀として、
しゃがんで両手を合わせる。
頭を下げて、目を閉じる。

 坂井直人。
ずいぶん久しぶりね。
わたしのことも覚えてるでしょう?
あなたのせいで、
うちの家族はめちゃくちゃになったのよ。
十二年経ったけどまだぎくしゃくしてる。
あなたのしたことは、絶対に許さない。
でも、最後に母の命を救ってくれたことは、感謝してる。
ついこの前、わたしの娘が交通事故に遭いそうになって、
危ないって思ったけど、
わたしは動くことも声を出すこともできなかった。
怖かった。
怖くて、
体が固まってしまって……
すごくショックだった。
あなたは、自分の命と引き換えに、
母を救ってくれたというのに。
それだけ、母のことを想ってくれてたってことよね。
遊びではなく、本気で愛してくれてたってことよね。
二度と言わないけど、一回だけ言うわ。
母を生かせてくれて、どうもありがとう。
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