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絶対に許さないからね
第4章 愚かな母
 詩子が兄の質問を適当にはぐらかしている間、
わたしはどんどん緊張が高まっていくのを意識していた。
毎日毎日、学校に通った道。
見慣れた景色がより一層見慣れた景色になっていき、
もうここからなら目を瞑ってでも帰れるってとこまできたとき、
わたしはきたことをほとんど後悔し始めていた。
兄が迎えにきていなかったら、
そのまま駅に戻って帰りの電車に乗っていたかもしれない。

 車はガレージの中に入り、エンジンが切られ、
なにもしていないのにスライドドアが開いた。
外に出ると熱気がもわっと襲ってきて、
後ろから降りてきた詩子に突き飛ばされ、
わたしは二歩、三歩とよろめいた。

 強烈な日差しに、目庇しながら見上げる。
親の顔ほど見慣れているのに、
すっかりとよそよそしくなった実家。
家の中から、犬の声。

「すげぇ吠えてるな。
やっぱいつもと違うやつがきたって、わかるんだな」

 嬉しそうに兄は言う。
絵に描いたような、親バカの顔。
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