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絶対に許さないからね
第4章 愚かな母
無言で、緊張した面持ちで、
でもくっきりと芯の通った強さを持つ母の姿。
六十七歳になり、さすがに歳を取ったと思う反面、
いまだに、いっそ妖しいと言っていいほどの艶気。
黒を着た母は凛として、
まるで覚悟を決めた極道のような引き締まった表情で、
わたしを見上げた。
その迫力に、わたしは後退りしそうになる。
怖いのではない。
悲しさが伝わってくる。
あの、家族が崩壊した日からずっと、
母が纏っている悲哀の波動。
銀ちゃんは、意志のはっきりとした強そうなお母さんだね、
と言ったけど、
わたしにはまったく違うように見える。
母はまるで泣いているような、
そう、まだ幼かったころ、
迷子になってぎゃん泣きしていた詩子と、
不思議と重なってみえる。
わたしを見つめる母の視線が、
すっとわたしの背後に流れた。
母の顔が、雪融けしたように笑顔になる。
忘れそうになっていた、母の優しい笑顔。
振り向かなくてもわかる。
よく知らないふたりのところにいるのが嫌だったのか、
それともわたしを心配してくれてか、
詩子がきてくれたのだ。
わたしは詩子に勇気をもらう。
固まっていた体が動くようになっている。
でもくっきりと芯の通った強さを持つ母の姿。
六十七歳になり、さすがに歳を取ったと思う反面、
いまだに、いっそ妖しいと言っていいほどの艶気。
黒を着た母は凛として、
まるで覚悟を決めた極道のような引き締まった表情で、
わたしを見上げた。
その迫力に、わたしは後退りしそうになる。
怖いのではない。
悲しさが伝わってくる。
あの、家族が崩壊した日からずっと、
母が纏っている悲哀の波動。
銀ちゃんは、意志のはっきりとした強そうなお母さんだね、
と言ったけど、
わたしにはまったく違うように見える。
母はまるで泣いているような、
そう、まだ幼かったころ、
迷子になってぎゃん泣きしていた詩子と、
不思議と重なってみえる。
わたしを見つめる母の視線が、
すっとわたしの背後に流れた。
母の顔が、雪融けしたように笑顔になる。
忘れそうになっていた、母の優しい笑顔。
振り向かなくてもわかる。
よく知らないふたりのところにいるのが嫌だったのか、
それともわたしを心配してくれてか、
詩子がきてくれたのだ。
わたしは詩子に勇気をもらう。
固まっていた体が動くようになっている。