この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
絶対に許さないからね
第6章 意地悪
父の法事があった日から十日ほど経った。
その、約十日間のうちに詩子と二回喧嘩し、
二回仲直りの抱擁を交わした。
喧嘩の理由は言うほどのこともない些細な、
でも言ってしまうと、
帰りが少し遅かったので小言を言ったら反論されたことと、
美香ちゃんと呼ぶのをやめさせようとしたら、
思いのほか議論がヒートアップしてしまったことだ。
小言は、わたしの言い方が悪かったと素直に認めて謝ったし、
美香ちゃんと呼ぶことを、
どうやら詩子はすっかりと気に入ってしまったようで、
改めさせるのは難しいことがわかった。
夜ご飯のあと、めったに鳴らない宅電に着信があり、
だれかと思って出てみたら兄からだった。
「おお俺だ、正孝。この前はお疲れ」
「こちらこそ、ごちそうさまでした」
そんな挨拶を交わすと、
ふたりともずいぶん大人になってしまったな、と思う。
昔なら、電話してきた兄が、うい、とだけ言い、
わたしが、なに? と返すだけだった。
今よりもっと簡単で、ずっと単純だった。