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絶対に許さないからね
第6章 意地悪
「どうしたの?」

 兄から電話がくるなんてめったにないので、
わたしは警戒した。
父が倒れたとき、父の容態が変わったとき、
そして父の危篤を知らせてきたのも、
兄からの電話だった。

「詩子は?」

「お風呂に入ってるわ」

 そうか、と言ったあと、
受話器越しに、兄が笑っているのがわかった。

「法事から二日ほど、オーロが妙に落ち着かなくてさ。
あっちこっちうろうろして。
あれ、たぶん詩子を探してたんだろうな」

 オーロを触ったときの感触を思い出す。
高い体温、もたれかかってきたときの重み、
ひとの髪よりうんとうんと細い体毛。

「あいつ、ただマザコンなだけかと思ってたけど、
どうやら女好きっぽいなー」

「わたしにはあんまり興味なさそうだったよ」

 言ってすぐに、しまった、と思ったけど遅かった。
兄のにやっとした顔が思い浮かんだ。
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