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絶対に許さないからね
第6章 意地悪
ここで急にがさがさと雑音が入り、
遠のいた兄の声でかすかに、
寝てたんじゃないのか、と聞こえてきた。
そして更に更に小さな、
代わって、という母の声。
わたしは息を詰めて、
がさがさかちゃかちゃ雑音を聞く。
まだ一言も発していないのに、
今受話器を持っているのは母だとわかる。
「あの…… 私です」
どんな雑音にでも負けてしまいそうな小さな声。
母の声は、受話器を通すとより細く、
年老いて聞こえる。
「正孝から聞いたと思うんだけど――」
「だめよ」
母の言葉にかぶせ気味に、わたしは言った。
母がもう、新しい男を作るなんて可能性は、
皆無であるということはわかっている。
ではなぜだめだと突っぱねるのか、
明確な理由はない。
強いて言うなら意地悪だ。
裏切った母への仕打ち。
腹いせ。
わたしはどんどん嫌な女になっていく。
遠のいた兄の声でかすかに、
寝てたんじゃないのか、と聞こえてきた。
そして更に更に小さな、
代わって、という母の声。
わたしは息を詰めて、
がさがさかちゃかちゃ雑音を聞く。
まだ一言も発していないのに、
今受話器を持っているのは母だとわかる。
「あの…… 私です」
どんな雑音にでも負けてしまいそうな小さな声。
母の声は、受話器を通すとより細く、
年老いて聞こえる。
「正孝から聞いたと思うんだけど――」
「だめよ」
母の言葉にかぶせ気味に、わたしは言った。
母がもう、新しい男を作るなんて可能性は、
皆無であるということはわかっている。
ではなぜだめだと突っぱねるのか、
明確な理由はない。
強いて言うなら意地悪だ。
裏切った母への仕打ち。
腹いせ。
わたしはどんどん嫌な女になっていく。