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絶対に許さないからね
第1章 暗い水辺
 夢の気配が霧散して、
気持ちが落ち着くまでたっぷりと待ってから、
わたしはベッドから起き出した。
気配に敏感な詩子を起こさないように、
そっと静かに廊下を歩く。
キッチンで低く唸っている冷蔵庫を開け、
その庫内灯の弱い灯りを頼りに食器棚からコップを出し、
ウォーターサーバーの冷たい水を飲んだ。
行儀が悪いからやめなさい、と銀ちゃんによく言われても、
やっぱり椅子に座るよりテーブルに腰掛けるほうが落ち着く。
冷蔵庫の灯りに照らされながら、水をもう一口。
飲み物専用にしている小さな冷蔵庫。
水は銀ちゃんの希望でウォーターサーバーを置いている。
でもそれ以外の飲み物、お茶と炭酸水と栄養ドリンク、
詩子のりんごジュース、それに銀ちゃんのビールなどが入っている。
半年先までビールの賞味期限があるのかどうか知らないけど、
例え切れていても銀ちゃんは、
大丈夫大丈夫と言って美味しそうに飲むに違いない。

 夫、銀一郎が半年間の海外勤務に出掛けてからやっと半分、
三ヶ月が過ぎた。
夫は日用品のメーカーで働いている。
海外勤務はこれで二回目。
一回目はアメリカで、今回はシンガポールの研究所。
洗剤やヘアケア製品、化粧品などのメーカーだけど、
夫がどんな研究をしているのかは知らないし、興味もない。
夫は、仕事を家に持ち帰らないタイプのひとだ。
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