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絶対に許さないからね
第6章 意地悪
「……お願い、どうしても行きたいの」

 やっと聞き取れるくらいの小さな声。
母のそれは、ただのお願いではなく懇願だった。
わたしは、ぎゅうっと心臓を握り潰されるような気がした。

 もう一度、だめ、って言おうとしたけど、
舌も喉も動かなかった。
肺の奥深くまで息が吸い込めなくて、
浅い呼吸を繰り返していると、
また不快な雑音が割り込んできた。
兄が母の手から受話器を取ったらしい。
遠い兄の声が聞こえてくる。
あとは俺が話をつけるよ。
絶対に説得するから俺に任せてくれ。
心配しないで、もう寝ろよ。
あ、寝てるときでも熱中症が怖いから、
水飲むのを忘れないでくれよ。

 電話を置いているリビングから、
母が出ていったのが気配だけでわかった。

「お前な、いい加減にしろよ。
母さん泣かせてどういうつもりだよ」

 イラついた兄の声につられて、
わたしのイライラも募る。
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