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絶対に許さないからね
第6章 意地悪
「ごめん、詩子がお風呂から出てきたみたい。
もう切るわよ」

「待てよ、まだ話は終わってないだろ」

 慌てたような兄の声。

「こんな話、詩子に聞かれたくないの。
じゃあね」

 一方的に、わたしは電話を切った。
ものすごく疲れていた。
喉がカラカラで、
あんまりお酒は好きじゃないのに、
無性にビールが飲みたくなって、
銀ちゃんのビールを一本失敬することにした。

 ビールを片手に、
兄に教えてもらった宿をスマホで検索してみる。
ごじんまりとした温泉宿だ。
秘境と呼ぶのにふさわしく、
街中からバスで一時間くらいかかるらしい。
古びてはいるが、それが味といえばそうとも言える。
でも特別景色がいいとか料理が豪華とかでもなく、
悪く言ってしまえば特筆するべきもののない、
よくあるような温泉宿だという印象を受けた。
どうしてここなんだろう、
という疑問を抱えながらホームページを眺めていると、
赤文字で重要と書かれたところに目が行き、
そこに閉鎖のお知らせと書かれていることに気がついた。
設備の老朽化が云々。
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