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絶対に許さないからね
第7章 ひとりあそび
 背中に壁が当たった。
無意識に後退りしていたみたい。
でももう逃げられない。
彼の手が壁に突きだされる。
これが有名な壁ドンか、
と感動している場合ではない。
うつむいているわたしの顔を、
彼が覗きこもうとしている。
顔が近づいてくる。
わたしは甘い気持ちに負け、
顎を上げてしまいそうになっている。
ここまできたらしょうがない、
となにがしょうがないのかよくわからないけど、
そう思おうとしている。

 キスを受け入れようと目を閉じた瞬間、
まぶたの裏に母の姿が映った。
あいつが死んで間もないころ、
部屋で静かに涙だけを流し続ける母の姿。
日に日に、感情まで涙に溶けて流れ出していくようだった。
あの母を見て、わたしは家を出る決意をしたのだ。

「会社に、報告しますよ」

 つぶやくほどの声量で、わたしは言った。
喉が萎縮してしまって、
それくらいの声しか出なかった。
でも、効果はそれだけで十分だった。
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