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絶対に許さないからね
第8章 宝もの
 悪阻は、まあまあしんどかった。
体がだるくて、いくらでも眠れた。
起きていると目眩がして、
ずっと車酔いしているみたいで、
車酔いなら車から降りれば治まるけど、
逃げられる場所はどこにもなかった。
くる日もくる日も気持ちが悪くて、
いつでも発射する準備はできてるって感じで、
無防備に炊飯器の蓋を開けたときは、
危うく炊きたてご飯の上にリバースするところだった。
毎日体調と機嫌が悪くて、
ずいぶんと銀ちゃんに八つ当たりをしてしまった。

 わたしは不安定だった。
感情がぐるぐる入れ替わり、
表情が次々とシャッフルされているのがわかった。
鍵穴にうまく鍵を差し込めない程度の些細なことで、
ドアを蹴るくらいイライラし、
銀ちゃんが出掛けにちょっとつまづいただけで、
しばらく笑いがとまらなくなった。
普段ならなにも感じないドラマのシーンに感動して泣き、
子猫が無邪気に遊んでいる動画を見たりすると、
涙が止まらなくなった。
無性に銀ちゃんが恋しくなって、
仕事中にも関わらず、
何度も電話して困らせたりもした。
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