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絶対に許さないからね
第9章 赤いリボン
 むあっと暑い空気に出迎えられる。
帰ってきた詩子のために涼しくしておいてあげようと、
エアコンのスイッチを入れ、スマホを探す。
こんなときに限って見つからない。
なんでないのよ、とわたしは泣きそうになっている。
もう八つ当たりで投げつけたりなんかしないから、
お願い出てきて。
洗濯機の側を通ったついでにタオルを引っ掴み、
噴き出す汗を拭う。
うちを出る前におしっこをしたことを思い出してトイレに行ってみる。
あった、よかった。
スマホで時間を確認する。
大丈夫、間に合う。
落ち着こう。
詩子にいつも言ってるじゃないか。
遅刻しそうでも焦っちゃだめ。
慌てて走ったりしたら事故の元。
そうなるくらいなら遅刻しちゃいなさい。

 見栄えなんかもうどうでもいい。
わたしは汗がどんどん流れてくるので、
さっきのタオルを首に巻いたまま駅へと急いだ。
もちろん、走ったりしていない。
ちょっと早足だったけど。
道路を挟んで、駅からひとが出てくるのが見える。
ちょうど電車が着いたばかりのようだ。
小さな駅なので五、六人。
スーツ姿のお姉さん、買い物帰りのおばさん、
老夫婦に学生のカップル、
その後ろから、リュックを背負ったそれはそれはかわいい女の子。
そこだけ輝いている。
いた、詩子だ。
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