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絶対に許さないからね
第9章 赤いリボン
 あ、違った。
スローモーションじゃない。
バイクのひとはちゃんと詩子に気づいていて、
速度を落としてくれたのだ。
ごめんなさい、というふうに、詩子が頭を下げると、
いやこっちこそ驚かせて悪かったね、という感じで、
バイクのひとが詩子に手を挙げる。
そしてわたしにも気づいていたらしく、
ヘルメット頭がこっちに向かってぺこりと頭を下げてくれた。

 バイクは小気味いい音をあげて走り去る。
そんなに爆音じゃなかった。
わたしは足の力が抜けてしまって、
その場にへたりこみそうだった。
力いっぱい握り締めているスマホから、
指を一本一本引き剥がす。
詩子が今度はちゃんと左右をしっかり確認してから、
ばたばたばたっというふうに道路を横断してくる。

「ただいまっ」

 ばふっと音を立てて、詩子が抱きついてくる。
詩子だ。
本物の詩子。
一瞬、永遠に失ってしまうかと思った。
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