この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
絶対に許さないからね
第10章 十二年
やっぱり詩子がいると気分が上がる。
欲しいイメージぴったりの色の口紅を見つけたみたいに。
それを塗ってお気に入りのブラウスを着たときに、
思わぬ相乗効果が得られているのを発見したみたいに。
「あー、やっぱり我が家が一番落ち着くわ」
うちに帰ってきてソファに座り、
オレンジジュースを一口飲んだ詩子の気持ちを代弁してあげたのに、
完全にスルーされた。
靴下を脱いだ裸足の爪先、
くるぶしの出っぱり。
詩子の足はとても形がいい。
「お腹空いてない?
リンゴ剥いてあげようか?」
詩子はぼうっとしている。
なにか考え事でもしているみたい。
詩子が相手をしてくれないので仕方なく、
リュックから着替えを出して洗濯機に入れた。
リビングに戻ってもまだぼうっとしている。
リンゴを剥いて前に出してあげても、
詩子はまだぼうっとしたままだった。