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絶対に許さないからね
第10章 十二年
「ああ、そうだ。宿でお化けに出会えた?」

 思い出したので聞いてみた。
詩子はお化けという言葉に反応したように、顔をあげた。

「どうしたのよ、ぼうっとして。
お化けに取り憑かれてるんじゃない?」

 茶化してみたけど、
詩子はよくわからないって感じで、
目をぱちくりさせた。
部屋が少し冷え過ぎているのでエアコンの設定温度を上げ、
詩子の隣に座ってリンゴを一切れ摘まみあげた。
しゃきっとした歯ごたえ、
くちに拡がる爽やかな甘み。
詩子がわたしにもたれかかってくる。
詩子の体温が嬉しい。
改めて、生きていてくれてよかったと思う。
甘えるような声で、
ねえ、と詩子がくちを開いた。

「おばあちゃんって、なんて言うか、
ちょっとミステリアスだね」

 詩子からミステリアスなんて言葉を聞くなんて意外で、
少し驚いた。
どこで覚えたのか知らないけど、
ちゃんと日々、いろいろなことを吸収しているんだな、と、
嬉しいような寂しいような。
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