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絶対に許さないからね
第10章 十二年
「待ちなさい、なにがあったの?」

 詩子の手を掴んで引き戻す。

「な、なにもないよ」

「うそ。お化けでもいいから会いたいってとこ、
もっと詳しく言いなさい」

「それしか知らないよ。
あたしも聞こうとしたんだけど、
おばあちゃんもう、
ごめんなさい忘れてちょうだい、
しか言わなくなっちゃったもん」

 頭を思いきりぶん殴られた感じだ。
放心して脱力した隙に詩子が手を振りほどいたけど、
もう追いかける気にならなかった。
危険を察知した詩子がリビングを出ていく。
わたしは両手で顔を覆う。
全身から力が抜けていく。
母がお化けでもいいから会いたい相手。
父のことを言っているのだ、
と思おうとしたけど、
頭はそれを全力で否定してきた。
わかっているのだ。
母の言うその相手が、だれのことなのかを。
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