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情報ねずみは眠らない
第3章 御曹司の裏の顔
「・・・・っっ!」

自分が今大変なピンチに陥っているにも関わらず、ひなは目をそらすことができない
息をのむほど、整った顔の造形。明らかに日本人とは違う通った鼻筋と、麦色の髪

「……ふふっ、やっぱり、キミ女の子だったね。思ってたよりずっと若いけど」

その天使のような外見の男は、ひなを呼んでいた声で喋った
瞬間、我に返ったひなは慌てて奪われた帽子とマスクを取り返そうとする
しかしスラリと背の高い男に届くはずもなく、無意味に手は空を切っただけであった

「僕、人間観察が好きだから、上からキミのこと見てたんだ。動きや仕草とか、うまく男のフリしてたし、他の人も気付いてなかったみたいだけど」

男は楽しそうに話しながら、ガラス扉をパタンと閉じる

「でも、僕には隠せなかったね。それに、時々こそこそ何かやってたでしょ。……キミ、何者?」

男の問いかけに、ひなは自分の置かれた状況を改めて理解した
このままでは、まずい。不審人物として警察に突き出されたら、今までの情報屋としての仕事が水の泡だ

「あ、安心して。別にキミのこと周りにバラそうとか、通報しようとか、思ってないから」

ひなの考えを読んだかのように、男は笑いを堪えながらそう告げた

「ただ、ちょっとお話したいなーって…。思ったんだけど、だめかな」

軽くクセのある麦色の髪が光を受け、キラキラ光る
長い睫毛の奥の、緑がかったグレーの瞳でじいっと見つめられると、何でも許してしまいそうになる

「今のところ通報する気は無いけど、キミの返答によっては…せざるを得ないかな~…」

天使のような顔で悪魔のような取引を持ち出してくる
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