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第3章 御曹司の裏の顔

「わ、わかった…、言う通りにするから、終わったらここから逃がしてよね」

動揺を押し殺し、ひなは言葉を絞り出した
ぱあっと笑顔になった男の可愛らしさに、不覚にも胸がキュンとする

「えへへ、やったー！じゃぁ、こっち来て！」

ひなの手を引くと、本棚の森を通り抜け、簡素なデスクとテーブルがある空間へ到着する
男はひなを近くのスツールに座らせると、隣に置かれたキングサイズのベッドに腰掛けた

「で、キミはだれ？…あっ、その前に僕の自己紹介をするね！」

キラキラと顔を輝かせながら、男は落ち着き無く話し始める

「僕は千里(センリ)、この家の次男だよ！」

「…へ？！」

予想外の男の正体にひなはついおかしな声を出してしまう
確か、この家には会長夫婦とひとり息子が住んでいるはず…
それに会長も会長夫人も日本人だが、目の前の男は明らかに違う

「んーとね、僕はいわゆる、愛人の子ってやつだよ。会長が昔仕事で北欧に行った時に作った子供！だから会社の跡取りは本妻の息子である兄さんなんだけど…」

「ちょ、ちょっと待って…！そんな情報知らな…」

「世間には隠してるからね。キミも、このことは秘密にしてね」

屋敷に潜り込んでいるひなに向かって重大な真実を軽く暴露した千里という男が、全くわからず目を白黒させる

「さあ、次は君の番だよ。…杉山、っていうのは偽名でしょ？」

ひなの作業服についたネームプレートの名前を見ながら、ニコニコ顔で問う千里