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波の音が聞こえる場所で
第3章 自分を百回殴りたい
 朱雀山城。朱雀市と山城市を合わせた駅名。後々知ることになるのだが、この二つの街は仲が悪いのだそうだ。隣同士の街が不仲だなんて朱雀と山城に限ったことではない。世間なんてそんなものだ。自分に近い人間が自分の味方とは限らない。駅名も朱雀が先かそれとも山城が先かでもめにもめたらしい。結果、人口が少ない朱雀が先になった。やるじゃん朱雀。いやいやそんなことなんてどうでもいい。
 はっきり言っておく、この二つの街が反目しあっていても僕には何の関係もないし興味もない。
 が、何だこの寒さは!朱雀山城のプラットホームに降りた僕は動くことができなかった。この寒さは尋常じゃない。東京とは別物の寒さ。僕の背後から新幹線のドアの締まる音が聞こえた。新幹線がゆっくり走りだす。僕は振り向くことさえできなかった。僕は県庁所在地に行くことを自ら放棄したのだ。
 僕の逃走先は朱雀山城……。いや待て、それを考えることより体を何とか動かして、この状況から脱することが先決だ。このままでは心臓まで凍りそうだ。心臓が止まれば自動的に僕の逃走はそこで終わる。
 とにかくこの駅を出なければならない。僕は出口に向かって……、どっちが出口なんだ?
こういうときは人の後に続けばいい……人いねぇし。まじで寒いし、でもってここで空腹のバカ野郎が腹の中で叫ぶし。人生詰んだと思った瞬間をこんなクソ田舎(朱雀山城が悪いのではない。この事態にうろたえて出た戯言だと思っていただきたい)で感じるなんて。それでも僕は一歩一歩足を前に出した。止またったらもうそこでお仕舞い。
 階段を下りてなんとか改札口を僕は出た。そしてまた階段。「天国への階段」ではなくそれは「地獄への階段」に見えた。でも僕はその「地獄への階段」を下りた。ゆっくりゆっくり、一段一段奈落の底に落ちていくような感じで。
 階段を下りた僕に閻魔大王が僕に呼び掛けた。右か左か、どっちに向かう。どっちが暖かい……いや気温のことは一旦考えることはやめよう。どちらが僕に幸せをもたらしてくれる(逃走者が言うべき台詞でないことはわかっている)。どうする!僕は心の中で絶叫した。 
 左に行く! 
 十mほど歩くと自動ドアがあった。ここから先はまじで地獄。すでに呼吸が困難になっていたが、僕はここで思いきり深呼吸をした。ぎこちない深呼吸が終わる。ドアの前に立つとセンサーが反応してドアが開いた。
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