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波の音が聞こえる場所で
第3章 自分を百回殴りたい
 僕は片側二車線の道路を右に曲がった。コンビニはあっちにもこっちにもあるそうだから、右でも左でもどちらでも構わない。右を選んだ理由はただ一つ。右の方からやってくる光の数が左よりも多くて、僕はその光がまき散らす誘惑にひかれたのだ。
 空腹と寒さのせいかもしれない。体が上手く動かない。手っ取り早く体を温めたいなら走ればいい(もちろん早歩きでも構わない)。ところが体を動かさなければならいという意志はあるのだが、肝心の体が僕の意志を受け止めてくれない。一歩踏み出すのにも相当時間がかかる。
 あっちにもこっちにもコンビニはあるのだろうが、こうなると朱雀山城の駅から一mでも近いコンビニに辿り着きたい。
 実はここでも僕は大きなミスをしていた。コンビニに行くだけなら新幹線駅朱雀山城の朱雀側ではなく山城側から出て。例の片側二車線の道路を左に曲がって少しだけ歩けばコンビニはあったのだ。
 運がないと言えばそれまでだが、僕の判断と行動のすべてが裏目に出ている。でも逃走ってそういうものなのかもしれない。逃走が順風満帆にすすむなんてあってはならない。そんなこと神様と仏様が許すはずがない。
 僕は今与えられた罰に毅然として立ち向かう……つもりだが寒い、そして腹が減った、でもって体が動かない。
 体の表面から段々凍っていくような感じがする。そしていつかその魔の手は僕の心臓にまで及ぶのだろう。そのとき、僕は僕でいられるだろうか?
 コンビニだ。まずはコンビニに行くんだ。そして何かを腹に入れる。そうすれば少しは体が回復するはずだ。ついでに辛うじて持ちこたえている心にも暖かな風が吹くような気がする。歩け!歩け!僕は僕にそう命令した。
 それにしても本当に人がいない。でもビジホだけはたくさんある。余計なお世話だが、供給過多のような気がする。こんな田舎に誰が何の目的で泊まるのだろうか。ビジホ……ビジホ……。そしてもう一回朱雀のビジホについて考える。
 熱いシャワーを浴びる。浴室から出たらキンキンに冷えているビールを飲む。発泡酒じゃ僕の体が許してくれない。冷えたビール、ここだけは絶対に譲れない。それから僕はふかふかのベッドの上で眠るのだ。夢を見ることなく朝までぐっすり僕は休む。そんな光景が僕の脳裏に浮かんだ。まずい、これって幻想なのか。低体温症の症状が僕に出始めているのだろうか。
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