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波の音が聞こえる場所で
第3章 自分を百回殴りたい
「寒くないっすか?」
 吉田君は僕にそう言った。吉田君の変化など全くないストレートな質問。おそらく吉田君は大学か専門学校のようなところに通っていて、アルバイトとしてこの店で働いているのだろう(あくまでも僕の予想)。
「寒いです。まじで寒いです」
「コートとかダウン着ないんですか?」
 僕のストライクゾーンも吉田君と同じ疑問を持っていた。
「ないです」
「死にますよ」
 吉田君の適切なアドバイス。
「さっき死にかけました」
「お客さん、どちらからお見えになったんですか?」
 と僕のストライクゾーン。
「東京です」
「東京!」
 驚く吉田君。
「お車ですか?」
 練習したかのようにいいタイミングで問いかけてくる僕のストライクゾーン。
「新幹線です。朱雀山城駅からここまで歩いてきました」
「歩いて!」
 再び驚く吉田君。
「それじゃあ温泉にはどうやって行くつもりなんですか?」
 不安そうな顔で僕のストライクゾーンは僕にそう訊ねた。
「歩いて行くのは無理ですか?」
「その恰好だったら途中で間違いなく死ぬと思います」
 吉田君の何も隠さないストレートな忠告。
「この辺の人間で歩いて弥彦や岩室に行く人いませんよ」
「いるとしたら、朱雀中学の長距離走る陸上部員くらいです」
 僕のストレートと吉田君のアドバイスが絶妙のタイミングで繋がっている。僕はちょっと悔しい。
「じゃあ他に弥彦か岩室に行く方法は?」
 おおよその回答はわかっていたが僕はそう訊ねないわけにはいかなかった。
「今の時間ならタクシーですね」
 僕のストライクゾーンは憐れむような目を僕に向けてそう言った。彼女は僕の懐具合をわかっている。ここは朱雀で東京ではない。
「今の時間じゃなかったら?」
 僕は食い下がる。
「JR。弥彦線に乗れば弥彦駅に行けますよ」
 吉田君のナイスなアドバイス。
「お仕事の手を休ませるようで申し訳ないのですが、その弥彦線の時刻表とかわかりますか?」
「僕が調べます」
 吉田君はそう言って、ズボンのポケットからスマホを出して弥彦線の時刻表を検索し始めた。
「ありがとうございます」
 吉田君、めちゃめちゃいいやつじゃん。吉田君、スマホの操作だってめっちゃ早い。
「朱雀山城駅六時十四分発弥彦行が始発となりますね」
 吉田君はそう言って検索したスマホの画面を僕に見せてくれた。
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