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波の音が聞こえる場所で
第5章 湯口の上の狸に独り言をぶちかましてやる
 なぜ対策を練るのか? それはつまり僕はまだこの温泉から出たくないからだ。体も心も正直だ。というか温泉の方が僕を風呂から出すまいとしている。「もう少し温まっていきなよ」と、出ようとすると湯が僕の手を引くのだ。
 温泉は気持ちがいい。めちゃくちゃリラックスできて体だけでなく心を綺麗にリセットしてくれる。
 山水旅館の風呂場で病床六尺を思い、自分の人生がいかにでたらめだったのかを思い知らされた(僕は感謝している。なぜならそれを感じなかったらおそらく僕はでたらめでいい加減な人生をこれからも送っているはずだ)。
 対策無しでは、僕は、僕の名前は明日の朝刊に一直線に突き進んでしまう。記者は何のためらいもなく淡々とここで起こった出来事を書くに決まっている。それだけは避けなければならない。
 あれ? 何だか変だ。ここには僕一人のはずなのだが……、一人じゃないような気がする。誰かがいる。絶対にいる。そういう気配を僕は感じるのだ。
 はっきりとは言えないが、僕には幽霊に会う能力があるみたいで、だからその科学では説明できない力が僕の中でうずうず動いているのかもしれない。
 でも見えない。見渡してもそういう人(現世で生活してない人)はいない。気のせいかと思ったそのとき!いた!やつはずっと僕を見ていたのだ。
 湯口の上に奴は堂々と鎮座していた。そして奴は堂々と自慢のいちもつを湯客である僕に披露していたのだ。奴の身長はおおよそ五十㎝、しかし金玉袋は三十㎝。
 奴はこう言っていた(おそらく)。
「よう若造、俺のと比べるか?」
 ここで怯んでは逃走者失格だ。
「悪いが僕の方がでかい。間違いなく僕はお前の租ちんなんかよりはるかに大きい」
 僕は湯舟の中で立ち上がり、狸の前で腰を突き出してやった。
「見ろ!」
 ……? デジャブ? 僕はこういう場面を知っている。あれは大学が夏休みに入った頃だったと思う。僕は誰かの前でこれと同じことをやった。というかそういう流れに乗ってしまった(いわゆる自己責任というやつ)。確か僕のペニスを見た人は大笑いしていた。
 あのとき、僕のペニスは勃起していた。なぜなら僕のペニスを見た人は女性で、でもってめちゃくちゃ綺麗で、さらに付け加えるならナイスなバディをしていたからだ。
 そう言えば、あの人にも幽霊が見えた。僕なんかよりもはっきりと幽霊を見ることができる人だった。
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