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波の音が聞こえる場所で
第5章 湯口の上の狸に独り言をぶちかましてやる
 僕と同じ人間がいることが気になって仕方がない。だから僕はこう訊ねた。
「どういうところが同じなんだ?」
「かけちゃん、慌てちゃいけないよ。かけちゃんだって俺と長く話をしてたいだろ。それが俺とかけちゃんにとってwin-winなんだよ」
「随分ハイカラな言葉を使うじゃないか」
「ハイカラなんて久しぶりに聞いたな。確かに俺はハイカラな狸だ」
「キンタ、話を先に進めてくれ」
「了解だ、かけちゃん。でな、百人中九十九人は俺を認めても大した反応なんてしないさ。あれ? こんなところに狸がいるぞってね。ちらっと俺を見て笑うやつもいれば、俺の存在を湯の中にいる誰かに教えるもいる。一番最悪なのは、俺に気付かないで風呂を出るやつだな。ギャラなんて貰ってないが、それでも旅の疲れを癒す一躍を俺も担っていると思うんだよ。そんな俺の気持ちをわからないバカがいる。実に悲しいね。おっとバカと言う表現はまずいよな。お詫びして訂正するよ。俺の気持ちをわからないお客様もいる、とね」
「僕だってようやくキンタに気付いたようなものだ」
「だよな。かけちゃん、しばらく思いに耽っていただろ。心配してたんだぜ」
「気を遣わせて悪かったな」
「構わないよ。そういうお客さんを見るのだって俺の仕事だ」
「ところでキンタ、一つ訊きたいことがある」
「何でも訊いてくれよ。お客さんと話すなんて本当久しぶりなんだよ。話したくてうずうずしてたんだ。カモーン!」
「英語も話せるんだな」
「もちろんだ。インバウンドのお蔭でこんな鄙びた温泉宿にも外人さんがやって来る。ただな、困ったことに外人さんはどういうわけか俺の金玉袋を撫でるんだよな。あれはちょっとな。撫でたところでご利益なんてないんだけどな」
「おさわり禁止って書いてやろうか?」
「ははは。かけちゃん、あんたおもろい奴だな。ははは」
「……」
 外人客に金玉袋を触られている光景……、僕はぞっとした。
「ところでかけちゃん、立っていないで湯に浸かりなよ。折角の温泉なんだ。突っ立ってちゃ体が冷えるぜ。温まんなよ。かけちゃんの自慢のいちもつは十分に堪能したからさ。でもかけちゃん、そんなものあまり人に見せちゃいけないぜ。男の器なんておちんちんお大きさで決まるんじゃないからさ。おっと、男の器って差別用語か?」
「ここには僕とキンタだけだ。差別でも何でもない」
「厄介な世の中だな」


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